説明下手卒業。描いて話を整理するビジネススキル「グラレコ」の活用法。

グラレココラム

 

 

会社員になると、色んな場面で何かを伝える機会が多いと思います。上司への説明、新商品のアイデア出し、取引先への商談などなど…。

ただ、誰もが対人の説明が得意なわけじゃないですよね。

商品説明の途中、顧客の反応がイマイチで「あ、伝わっていないな」と気づいても、口頭でどのように補足すれば良いのか分からない・・・。

そんな経験をしたことはありませんか?

もしくは、せっかく作った資料や議事録がほとんど読まれなかった、なんて経験をする人もいるかもしれません

かくいう私も昔はその1人でした。

今でこそ、描いて物事を記録する、伝える、グラレコの仕事をしていますが、元々は普通の公務員。しかも、会議の議事録や口頭の説明などが「わかりにくい!」とよく上司に怒られているような人間でした。

そんな私の人生は「グラフィックレコーディング」(通称:グラレコ)と呼ばれる技術に出会い、大きく変わりました。自分にとって、苦手意識の強かった「伝える」ということが、今ではむしろ得意になり、大企業やテレビ番組からの依頼など、その道のプロとして仕事をいただけるようになったのですから。

そして今回、たまたまアドビさんのPR企画「みんなの資料作成」に参加できることになり、折角ならみなさんにも、グラレコで物事を伝える楽しさを知ってもらおうと思い、この記事を書きました。

絵を描くのが苦手な人でも大丈夫。

最初は、◯△⬜︎といった簡単な図形を描くだけでも、人に何かを伝えるには十分です。

口頭での説明が苦手、という人や、会議やワークショップに新しい取り組みを入れたい!という人たちに読んでいただければ幸いです。

画力ゼロ。平凡な公務員がグラレコに出会うまで

まず最初に、もう少し私の話をさせてください。

グラレコの仕事をしていると、よく言われるのが、「元からイラスト描いていたんでしょう」といった声。でも、実は私がイラストを描き始めたのは、グラレコに出会ってからが初めてなのです。今から6年前の2018年の10月ごろ。社会人になって3年目、26歳の時でした。

これまでの人生でしっかりと絵を学んできたことはありません。中学の美術の成績も3。人並みかそれ以下といったところです。そんな私がなぜ、グラレコを独学で学び始めたかというと、仕事の中で、日々悶々とした葛藤を抱えていたからでした。

公務員として働き、3年が経つ頃、私は、定例の会議や報告書のあり方に疑問を持つようになっていました。ただ開催するだけの報告会、さらっと流し読みされる報告書。

これに一体なんの意味があるのか…?

そんな葛藤を抱えながらも、自分自身にはすぐに会議のあり方を変える力はなく、公務員として働き続けていても、その答えを見つけることは難しいと考えました。

それからは、外部のまちづくりやビジネスのセミナーなどによく参加するようになり、そこで出会ったのが「グラレコ」というスキルです。

初めてグラレコを見た時、息を飲みました。話し合いの様子がみるみる絵になっていくんです。こんな人がいるのか、、、!!ものすごく衝撃を受けたことを覚えています。

セミナーが終わった後に、一枚絵として完成したそれを見た時「わかりやすい」と声が漏れました。

当時の私は、生で見るグラレコというスキルに魅了され、少し調べてみながらも「画力がない」という理由で学び始めることを躊躇していました。ですが、イベントで知り合ったグラフィックレコーダーにこう言われたのです。

「私も今まで本格的に絵を描いたことがなかった状態から、グラレコの本を読んで挑戦してみたんです。山岸さん、これから私はグラレコの講座をしようと思っているのですけど、興味があるのでしたら、その運営に付き合ってもらえませんか?」

これは私がグラレコを始める一つのきっかけになります。

私は講座の運営を手伝いながら、そこで学んだことを自分の業務にも取り入れてみることにしました。もちろんいきなり業務に活かせたわけではなく、最初は、YouTubeで動画を見て、話をノートにまとめる練習からでしたけど。

ある時、公務員の研修で、その内容をグラレコみたいにリアルタイムでノートにまとめることに挑戦してみたんです。そのノートの内容が研修担当の目に留まり、役場内の掲示板に公開されることになりました。

画力はなかったと思いますが、それでも好評をいただき、これをきっかけに別部署の会議などにも呼ばれるようになりました。話し合いの内容をイラストにまとめてアウトプットする。イラストにコメントを加えるだけで、会議の内容がこんなに説明しやすくなるとは、自分でもびっくりする経験でした。

たとえ会議中にあまり発言しなかったとしても、グラレコを通じて会議に貢献することもできるんだな、と実感できたのです

そういったことが重なり、グラレコをする中で、自分自身も講座が開催できるほどになり、今に至ります。当初の私のグラレコは、ご覧いただいたとおり「ものすごくキレイ!」というわけではありません

ですが、それでも「振り返りやすさ」と「伝わりやすさ」という点において、効果は抜群でした。

ここから、より具体的なグラレコのノウハウについてご紹介していきますが、「画力がないから…」という心配は一切いりません。

26年間絵を練習したことがなかった人間が、今は「絵を説明に使うこと」で生活できるようになったのですから。

自分が初めた時に意識したこと、簡単なコツをまとめましたので、「絵が苦手…」というあなたも最後までお楽しみいただけたらと思います。

そもそもグラレコとは?

グラレコについての具体的なノウハウをご紹介する前に、まずは「そもそもグラレコって何なの?」という点をおさらいしておきましょう。

 

英語では、graphic recordingと表記するように、「グラレコ」とは、図やイラストを用いて、その場で記録していくことを指します。元は海外で、意思決定を助ける技術として使われていました。

グラレコは、会話内容をリアルタイムでイラスト化・図式化し、話し合いの参加者に会話内容を視覚的にイメージしてもらうことで、話し合いへ参加しやすくするものです

文章だけでは想像することが難しい話題についても、イラスト化することで、参加者全員が理解して話し合いに参加でき、意思決定もしやすくなる効果があるのです。

そういった側面から、企業の打ち合わせの他にも、講演会の記録作成などでも活用されます。

たとえば私の最近の例でいうと、生放送の現場で、コメンテーターの言った内容が視聴者に伝わるようにレコーディングするという依頼もありました。

また、グラレコのノウハウ書籍なども増えてきており、その注目度が高まっていることがうかがえます。

最初にグラレコを作成するための4つのポイント

まず最初に忘れてはいけないことは「グラレコの目的」です。グラレコの目的は、絵を上手く描くことではなく、伝わること。グラフィックレコーディングはその性質上、イラストに注目が集まりがちですが、話し合いの場では、時間をかけてイラストを描くわけにはいきません。最低限のイラスト、文字でまとめることが優先されるため、画力の優先度は高くないのです。

その上で最初に意識すべきポイントは、以下の4つです。

①情報・モノの9割は◯△⬜︎で表す

②行動や時間経過、移動などは矢印で表す

③慣れるまではレイアウトパターンを使う

④リアルタイムで大事なのは描くより聞くこと

ここからは、私の公務員時代の実体験と合わせて、各ポイントについて詳しく解説していきます。

公務員時代にシステムの更新作業があり、外部のシステム会社と話し合いの機会があったのですが、こちらの要望として下記のようなものがありました。(あくまでも一例なので、簡略化しています)

【私たちのシステムでは、入所決定通知書と保育料決定通知書を出しています。それぞれ別々に打ち出す必要があるのですが、同じ人物のデータを打ち出す際、1回ごとにシステムを同期する必要があるため、手間になっています。】

口頭や文章で説明すると、すぐわかる人もいると思いますが、色んな作業と並行して行っていると、しっかりと伝わりきらずに終わってしまうこともあります。しかし、上記の要望を図示するとこう言った形になります。

 

▼図1

人によるとは思いますが、文字情報の方がわかる人もいれば、記号やイラストの方が内容が頭に入ってくる人もいます。

さて、先ほど紹介した4つのポイントがどのように活かされているのか、ここから具体的に見ていきましょう

 

①情報・モノの9割は◯△⬜︎で表す

図1を見て、ほとんどの要素がシンプルな図形で表現されていることにお気づきでしょうか。

そう、説明で使うような情報・モノは、あまり描き込まずカンタンに図示すれば充分なのです。

上記の例題で載せたものはほとんどを記号で作っています。人物についても◯と△と線だけで作ります。たいていの伝えたいものは、ものすごく簡略化してしまえば、記号だけで表すことができると思います。

話し合いの場では、複雑な情報よりシンプルなものの方がリアルタイムで描きやすく、また話し合いの時間を大きく奪われずにすみます。

 

②行動や時間経過、移動などは矢印で表す

図1では、システムからの書類発行の流れを矢印で表現しています。

実はこれも、上手にグラレコを取るための大事なポイントです。

時系列や行動、位置関係、物事の関係性などは矢印で簡略化します。私自身も、文章で書くと長くなってしまうものについては、割と矢印を多用しています。特にリアルタイムで描くときは、全ての言葉を聞き取り、文字で書いているとかなり時間がかかってしまいます。「だから」「つまり」「そう言ったところから」みたいな順接的な流れも矢印で片付けられますし、右下に描いたように、対立構造を示すのに矢印を使うと便利です。

また、グラレコは必ず絵を用いるもの、と思われがちですが、上記の右下の図のように、文字情報と矢印だけでも、相手に状況を説明することができます。

何度も言いますが、グラレコで大事なことはあくまで、伝わることなので、文字だけで伝わるのであれば、それで十分なのです。

 

③慣れるまではレイアウトパターンを使う

図1を見たとき、あなたはどのような順番で情報を追っていきましたか?

きっと、上段に描かれている「現在のシステムの問題」を左から右に読んだあと、下段の「要望」部分を左から右に読んだのではないでしょうか。

このときの視線の流れは、アルファベットの「Z」の形になっています。

初めは、自由に描き始めるのではなく、Z字で描いてまとめていくことをお勧めします。情報を目で追うとき、人は無意識のうちにZ字に沿って視線を動かす傾向があります。

プレゼン資料やポスターなども、Z字のレイアウトで情報が掲載されていることが多いですよね。

Z字に合わせた描き方をすることで、時系列や話の流れを理解してもらいやすくなるのです

情報が多い場合は、紙を区切って細かいZ字でまとめることも有効です。

 

逆に、時系列が関係ない場合。

たとえば自由にアイデア出しをする構図を描く場合は、中心からどんどんアイデアを外に広げていく形で描けるといいと思います。

シンプルですが、Z字とは違い、全体に散らして描くことで、隙間が生まれにくくなります。

 

④リアルタイムで大事なのは描くより聞くこと

図1を描くとき、私がまず最初に意識したのは、「関係者の話をしっかりと聞き、正確に状況を把握すること」です。

どんなにキレイに描けたグラレコであっても、内容が間違っていると間違った情報を伝えてしまうことになります。

グラレコには、リアルタイムで情報を整理しながら描き、イメージを共有することが求められます。

そのため、重要度で言うと「描く」ことよりも、「聞く」ことの方が重要です。

誰が、どうして、どうなったか、それはなぜか。単純に商談やアイデアを聞きながら描いていくのであれば、レイアウトを気にする必要性はあまりありません。グラレコの見た目にこだわるよりも、相手の話を聞きながら、描くことが大事です。

間違えていれば、その場で修正して描き直せばいいのです。相手の話を聞きながら、自分の理解が間違っていたら修正して、その繰り返しで作っていくのが、真のグラレコの使い方だと考えています。

つまり、出来上がったイラストが大事なのではなく、話を聞き、それを書きながら、ビジョンを擦り合わせていく過程こそが一番大事です。

少なくとも私は、きれいに描くことよりも、間違ったことを記録していないか、という確認を何より大事にしています。

イラストや文字の情報は脳にイメージとして残りやすいので、間違った情報を拡散することは本意ではありません。

仕事で描く時は、最終的に参加者にチェックしてもらい、修正したものを納品するようにしています。

 

以上の4つのポイントを知ってみて、いかがでしたか?

「あ、絵が上手じゃなくても描けるかも!」と思えたのではないでしょうか。

そう、グラレコに必要なのは、「どうすればみんなに情報をわかりやすく伝えられるかな?」と考える気配りなのです。

 

シンプルな図形と矢印を使い、読みやすいレイアウトで情報を配置できれば大丈夫。

相手の話をしっかりと聞くことを意識すれば、きっとあなたもグラレコで話し合いの助けになることができますよ!

情報共有は記憶が鮮明なうちに!納品時に気を付けたいポイント

会議やイベントなどの依頼で作成したグラレコは、紙やタブレットデータからPDFに変換し、なるべく即日に参加者に共有することが多いです。

その際、Adobe Acrobat オンラインツールを使うと、グラレコをさらに有効活用することができます。

たとえば「PDFを編集」機能なら、PDFにコメントを入れられるので参加者からの感想を集めることができます。

個々の参加者が共感した部分や、もっと話を聞きたい部分などを書きあい、グラレコを軸とした意見交換が可能となります。ビジョンを共有した上で、より深い議論を行うためのツールとすることができるのです。フリーハンドでコメントを書き入れることもできるため、グラレコそのものについても、意見のフィードバックを参加者からいただくことが可能です。

また、Acrobat オンラインツールの「PDFを結合」機能なら、複数のグラレコをひとつのファイルにまとめられるので、たとえば定例のディスカッションの過程を振り返りやすい形に整えることもできます。(画像だとひとつずつファイルを開く必要がありますよね・・・!)

上記に加えて「PDFにページを挿入」「PDFのページを削除」「PDFを分割」といった機能もあるので、ひとつにまとめたファイルに後から手を加えることもでき、作成したグラレコをより活用することができます。

企業にデータを送る際は、圧倒的にPDFで送ることの方が多いため、そこで意見をもらったり、修正したりするためにAdobe Acrobat オンラインツールは有効です。

私は元々口下手で、自分のできることを話すのも苦手だったので、説明やアピールが必要な機会で、損することが多かったと思います。今では、逆に説明が必要な機会こそが、自分をアピールするチャンスに切り替わっています。

この企画「みんなの資料作成」に参加したことで、グラフィックレコーディングというものをもっと広く知ってもらい、その活用の場が広がることを願っています。